戦い方の探索者

戦いの知恵を身につけ、自分の戦い方を築く。

不思議の[ゲームの]国のアリス その3

 

●戦闘レースと長い説明

 

アリスが砂浜へたどりつくと、そこには複数の生き物がいた。
鳥が多い。

 

アリスがキョロキョロとしていると、後ろから声がした。
「ありゃ! こりゃまたアリスじゃないか」
振り返ると、ネズミが立っていた。
「ネズミさん! また会ったわね!」
「いや~、また同じミッションになるとは、奇遇奇遇」
「また新しいミッションが始まるの?」
「そうさ、ルール無用の戦闘レースがはじまるんだ。ここは、そのレース参加者のラウンジ、つまり待合室さ」
「戦闘レース……」
「レースのルール説明動画があるよ。シートに座って見てみるといい」
「ありがとう! 見てみる」

 

アリスは近くにあるシートに座り、モニターで動画を見た。
動画によると、このレースは『目的地に到着すること』以外に制約はなく、何をしてもいいらしい。
装備も、改造レベルに応じたものなら、ジェネレーターも含めて何を使ってもかまわないという。

 

説明を見終わったアリスは、シートから降り、ネズミのそばへ行く。
アリスに気づいたネズミは、
「どうだい、アリス?」
と声をかけた。
「ほんとに何をしてもいいみたいね……ネズミさん、どうすればいいのかしら?」
「うーん、そうだね……うーん……アリス、君は、君が参加しているこのゲームの目的が何か知っているかい?」
「目的? このゲームの?……わからないわ。だって突然に始まったんですもの」
「そりゃそうだ。まあ、ボクもわからないんだ」
「ネズミさんも?」
「ああ、そうさ。
ただ、わかっているのは、ミッションを成功させていくと何かある、っていうことだけなんだ。
だから、ゲームの目的はわからないけど、ボクのこのゲームでの目的は、ミッションを成功させることさ」
「そうなのね」

 

「そうさ。ちなみに、アリスのこのゲームでの目的はあるのかい?」
「うーん、それもよくわからないわ…」
「まあ、よくわからないなら、それでいいさ!
でもアリス、今、目の前にミッションがある。
アリスはこのミッションを成功させたいかい?」
しばしの間、考えたあと、アリスは
「……うん」
とうなずく。
「なぜ?」
とネズミ。
「……さっきミッションに成功したとき、うれしかったから。うれしいと、楽しいわ!」
「ふふふ、それは結構な答えだ。
ちなみに、ミッションを成功させるには、どうすればいいとアリスは思う?」
「うーん、そうね、どうなのかしら? さっきのミッションだったら、敵を撃破すればよかったわ」
「そうそう、それがミッションの目的だった。じゃあ、敵を撃破するにはどうすればいいと思う?」
「うーん、敵を撃破するにはどうすればよかったのかしら……? ネズミさんの教えてくれたとおりにやったら、撃破できてしまったわ」
「そうだね。たしかにボクのアイデアによる作戦をやったら、敵を撃破できた。」
「すると、その作戦……? をつくることができれば、ミッションを成功させることができるのかしら」
「そう。ミッションを成功させる作戦、少し言いかえると、ミッションの攻略法を考え出せれば、ミッションを成功に近づけることができる。
それはそうだ。
で、ここからが大事なんだけどね、アリス」
ネズミは丸い目を見開いて、じっとアリスを見た。
少し間をおいて、口を開く。
「このレースでボクはたまたまアリスとまた会えたけど、この戦闘レースでは参加者みんなが敵なんだ。
つまり、ボクとアリスは戦わなきゃならない。
アリスは戦わなきゃならない敵なので、今回、ボクはアリスに攻略法をつくってあげられない。
アリスが1人で攻略法を考えて、ボクを含めたほかの参加者と戦わなきゃいけないんだ。」
ネズミが言い終わると、アリスは少しの間、沈黙した。
「そう……そうよね……」
アリスはそうつぶやくと、不安になって視線を落とす。

 

「なぁ~に! 大丈夫!」
ネズミはアリスの背中をぽんと押した。
「ここでまた会ったのも何かの縁。
レース開始までに、伝えられることは伝えてあげるよ」
「ありがとう! ネズミさん!」

 

「よし! では、そうだなあ…
まずは、これから始まるミッションの目的を明らかにしなければならないけど、なんだと思う?」
「ミッションの目的…目的地に到着すること、だわ」
「そうだね。
目的地に到着すること、が目的。
前回のミッションの目的は、敵の撃破だったけど、その違いはわかる?」
「うーん、敵を撃破することじゃなくて目的地に到着する、ということだから、敵を撃破しなくていい、ということかしら」
「そうそう、今回は目的地に一番早く到着すれば勝ちなので、必ずしも敵と戦う必要はないんだ。
敵と戦う必要はなく、一番早く目的地に到着する必要がある、ということは覚えておいてよ」
「うん」
「で、次に、アリスが目的を達成するための手段は何だと思う?」
「わたしの手段…つまり、わたしがレースで一番早く着くための手段…それは、機体?かしら」
「そうだね。レースは機体に乗って行うから、その機体が手段になる。
そして、アリスがどういう機体を選び、そして、どういうレースの仕方をするのか、ということが、今回のミッションの攻略法になるんだ。
つまり、まず目的をきちんと考えて、次にその目的を達成する手段について考える、そして、目的と手段をつなぐアイデアを生み出す。
このアイデアこそが、攻略法なんだよ」
「そうなんだ…」

 

「まず、目的を達成するためにどういう手段をとり、どう行動すればいいのか、ということを考える。
そのあと、その考えたことを実際に行い、その結果、つまり成功したか失敗したかを知る。
そうすると、『こういうときにはこうすればいい』という判断の基準がつくられていくんだ。
この判断基準の集まりこそが、攻略法、攻略パターンと呼ばれるもので、アリスの経験によりつちかわれた知恵ってやつなのさ」
「ふーん。
ネズミさんは、前のミッションでいろいろ試して、つまり試行錯誤して情報を得るように言ってたけど、攻略法も試行錯誤するのね」
「ご明察!
アリスはまだあまりゲームをしていないので、その試行錯誤は少ないんだ。
だから判断基準はほとんど無いし、それゆえに攻略法もない。
でも、これからミッションをするときに、ミッションの目的と手段をきちんと考えていけば、よりうまい攻略法をひらめけるようになると思う。
目的と手段、この2つについて考えるということを忘れないで」
「わかったわ! 目的と手段ね!」
「よし!
じゃあ、今回のミッションの攻略法について、アリス1人で考えてごらん。
そのあとで、今回だけは、アリスの考えた攻略法についてアドバイスをしてあげる」
「わかったわ!」

 

アリスはネズミから離れ、自分で考えはじめた。
「うーん、目的は、『敵と戦う必要はないけど一番早く目的に到着すること』。手段は、『どういう機体を選ぶか』。そして、『どういうレースの仕方をするのか』、ね……」
アリスは共用机に置いてあるペンとメモを使いながら、ひとしきり考えたあと、シートにまたがって機体の装備の変更に取りかかった。

 

しばらくして、アリスは装備の変更を終えたので、シートにネズミを呼んだ。
「お、できたいのかい、どれどれ……」
ネズミは興味津々でモニターをのぞき込む。
「へぇ~~!! これは思い切ったね~~!!!」
ネズミは感心した。

 

ゲーム開始時にアリスに支給された機体は、機動力、火力、防御力のバランス型の機体だ。
武器はマシンガン、金属製の棍棒、防具は盾を持っている。
そして、アリスはまだゲームを始めたばかりで改造レベルが低く、ジェネレーターなどを大きく変更することはできない。
つまり、初期に支給される、ほどほどのジェネレーターでレースをしなければならない制限があった。

 

そこでアリスは、レースの目的である『一番早く目的地に到着する』ことを最優先させるため、機動力を高め、火力を捨てた。
つまり、マシンガンと棍棒、盾、そしてそれらを持つ両腕を外し、その軽くなった分、機体の前面装甲を厚くし、機動力を高める推進器を装備した。

 

「アリス、これは、とても自分ではじめて装備をしたとは思えないほどいいよ!
この前面装甲、前回のミッションの知識を活かしてるね」
「そう! ラムみたいでしょ!」
「ふむふむ、速度を上げて敵を置いてけぼりにして戦闘を避け、戦わないといけないときには体当たりでしのぐ、というレースの仕方だね」
「そう! 前回のミッションの船が速かったので、それをヒントにしたレースの仕方なの」

 

内心、ネズミは舌をまいた。
たった1回のミッションの経験を、こうも活かすことができ、かつ、思い切りよく装備変更できるとは。
そして同時に、アドバイスをした者として、少し誇らしかった。

 

「アリス、ぼくからは言うことはないよ。これでレースに出るといい」
「ほんと!? やった~!!」
「ただ、アリス、今回はボクがアドバイスするためにアリスの機体を見せてもらったけど、今後は敵に機体を見せちゃだめだよ。
見せると、アリスの機体の攻略法を、前もって敵に考えられちゃうことになるから」
「わかったわ! ネズミさん」
「よし、ではこれでアリスのレースの準備は終わりかな。
そこで、ボクから提案があるんだけど」
「なにかしら」
「このレース、ボクとチームを組まないかい?」
「え?! でも、参加者みんなが敵って言ってなかった?」
「たしかに、参加者みんなが敵であることはホントさ。
でも、ルール無用のレースだから、チームを組むことに問題はないんだよ」
「そうなのね。わたしもネズミさんと一緒にミッションができるなら、いいわ」
「ありがとう!
ただ、チームとしてのルールを決めておこう。
目的地の2キロメートル前になったら、お互い敵に戻る。それまではともに進み、前進を助け合う、というのはどうだい」
「いいわ。でも、ともに進むといっても、わたしとネズミさんの機体の速さは同じなの?」
「それは問題ないよ。アリスの機体の速度に、ボクの機体が合わせられるように装備を変更するから」

 

ネズミの機体は、重量はあるが出力がひじょうに高いジェネレーター(改造レベル高)を積んでいる。
武器は両手持ちの大型ビームライフルで、足回りを強化して機動力を高めている。
装甲は薄めだ。
アリスの機体の速度に合わせるように計算したところ、このままで充分なので、装備の変更はしないことにした。

 

「アリス、ボクの機体の準備も終わったよ。
ミッション開始までにまだ時間があるから、ちょっとだけ機体の操作シミュレーションをしようか」
「うん」

 

2人は、シートに座ってシミュレーションを開始した。
「どうだい、アリス、操作は」
「前のミッションと同じ感じでいけそうだわ」
「それはなにより。
さてアリス、前回、ボクは敵の情報を得るために、『武器の観察』と『試行錯誤をすること』を教えたけど、それは覚えてるかい」
「うん。試行錯誤はほとんどできなかったけど」
「いいよいいよ、ただ、ホントは武器以外にもいろいろと情報を得なきゃいけないんだ」
「武器以外の情報?」
「そうさ。アリスをとりまく情報を集めて、アリスがどんな状況に置かれているかを把握しなきゃいけないんだ。
アリスが今どうなっているか、という状況を把握することで、アリスが次にどう行動すればいいかを考えることができる」
「なるほど。アリスが今どうなっているか、ね」
「うん。
そのためには、アリスが周りを見るさいに、注目することを決めておく必要がある。
言いかえると、モニターの画面に表示されるもののうち、どれから注目するかを決めておくってこと」
「注目……」
「うん。
参考までに、ボクがやっていることを教えるね。

 

自分の周りの地形に注目。

自分の攻撃方法(使える武器、武器の残弾)に注目。

敵がいるかいないかに注目。

敵の位置(距離、方位)に注目。

敵の攻撃方法に注目。

敵の位置と攻撃方法から、どの敵が危険なのかに注目。

これらの注目によって把握した状況をふまえて、逃げるか、攻撃するか、攻撃するならどの敵から攻撃するか、を判断する。

 

という感じかな」
「長いよ~」
「そうだね、ごめん。
じゃあ、『まずは地形で次に敵、一番危険な敵は誰?』と覚えておいてよ」
「わかったわ! 『まずは地形で次に敵、一番危険な敵は誰?』ね」
「そう。それだけでいいよ。
まずはそれだけを注目できるようになって、詳しいことはそのあとで注目していけばいいから」
「えーっと、『ミッションの目的、手段、攻略法』
そして、『まずは地形で次に敵、一番危険な敵は誰?』」
「そうそう。
まずはそれだけを考えることに慣れれば、じきにいろいろと細かいことが見えてくると思うよ」
「一番危険な敵が誰かがわかったら、そのあと、逃げるか攻撃するかを考えるのね」
「うん。
その逃げるか攻撃するか、という判断基準は、敵に対する攻略法として、アリスがミッションの経験を積んでつくっていく必要があるよ」
「わかったわ! それはいろいろ試してみる、つまり試行錯誤よね!」
「その通り!
成功と失敗を繰り返してつくっていくのさ!
さあ、アリス、そろそろミッション開始の時間だよ!!」
「うん!」

 

画面に、これからミッションが開始されるという通知と、ミッションについての情報が表示される。
情報によると、レースの参加者は、戦場にランダムで配置される。
戦場は海岸のある陸地で、陸地は森林でおおわれており、川が何本か流れている。

 

その戦場内のどこかに目的地となる赤いリングが出現するのだが、リングが戦場に出現するタイミングもランダムらしい。
そして、その赤いリングに飛び込んで入ればゴールとなる。

 

レースの参加者は、アリス、ネズミ、インコ、カモ、ドードー、ワシ、カニ、カササギカナリアの9人。

 

参加者名簿を見て、
「うわっ、常連が多いな……」
とネズミがつぶやいた。
アリスがネズミのほうを見る。

 

ネズミもアリスのほうを見て、切り出した。
「あ、アリス。インコとカモは、ボクを狙ってくる可能性が高いので、そのことをあらかじめ伝えておくよ」
「仲が悪いの?」
「うーん、まあ、仲が悪いというか、一方的なライバル視をされてるというか……
あと、ドードーはそこそこ強いのと、ワシには絶対に近づいてはいけないよ」
「ワシは強いの?」
「うん。かなり。
まあ、近づくなといっても、ワシにやられるときは、近づいたかどうかもわからないうちにやられちゃうけどね」
「ええ~?! どういうことなの?」
「狙撃さ。かなり遠くから当ててくるよ。
ボクも狙撃系だけど、ワシと1対1で戦って勝てるかどうかは、運がからんできちゃうね」
「こわい……『一番危険なやつ』リストに入れておくわ」
「そうしておいてよ。
アリスとボクが戦場にランダムに配置されるということは、合流するまでは1人で生き残らなきゃならないからね」
「不安だわ」
「そうだね、レースが始まって戦場に配置されたら、まず近くの地形を確認して、地形のかげになっているところがあったらそこに身を隠すといい。
そして、一回だけ、ボク宛てにアリスの現在位置を教える通信を入れてよ。
通信は一回だけね。
何回も通信すると、その通信によってアリスの位置が予測されちゃうかもしれないから。
隠れていてくれたら、あとはボクが迎えに行くよ。
もし戦場に配置されたときに、すぐ近くに敵がいたら、機動力を活かして敵からは逃げるといい。
その逃げている間に、ボクが合流できるように急ぐよ」
「わかったわ。
『まずは地形で次に敵、一番危険な敵は誰?』、敵がいたなら距離離す、でがんばるわ」
「OK、それじゃ、そろそろ始まるようだよ」

 

こうして、レースが開始された。
レース参加者が戦場に配置される。

 

アリスは戦場へ配置されるやいなや、周りの地形を確認し、敵がいるかいないかを確認した。
現在地は、川の中腹の岸だ。
あたりに敵はいない。
川は深い森林にはさまれているので、そこに身を潜めることにした。
そして、ネズミに現在地の座標を送信する。

 

しばらく身を潜めてモーショントラッカーに注意しいてると、ネズミから通信が来た。
「えーっと、座標に到着した、森にいるなら川側に足を出して、ね」
アリスは言われたとおりに、森の切れ目から川へ向かって足を伸ばした。
そのまま少し待っていると、ネズミが合流した。
「いや~、発見されないよう、速度を出さないように移動したので遅くなってごめん。
しかし、敵がまわりにいないのはラッキーだったね」
「うん、無事に合流できてよかった」

 

「さて、アリス。
これから、目的地を探さないといけない。
目的地自体が、すでに出現しているかさえもわからないけど……」
「どうやってさがせばいいのかしら」
「そうだね、やはり手っ取り早いのは、高い場所から見下ろしてみることかな。
ただ、レース参加者みんながそう考えるだろうから、高い場所のまわりでは戦闘になると思う。
……大丈夫かい?」
「戦闘はちょっと怖いけど、目的地を探すためならしょうがないのね」
「うん。ここにいても、目の前に目的地が出現するというとんでもないラッキーが起こる以外に勝ちようがないからね。
そして、そんな可能性の低い受け身のラッキーをあてにするなんて、敗北への道を進むようなもんさ」
「……そうね! 前へ進みましょう!」
「うん、じゃあ行こう!」
ネズミはマップの一ヶ所を指さす。
「この高地へ向かって進もう。
もちろん、敵に見つからないように」
「わかったわ」
アリスとネズミは高地に向かい、しずしずと進みだした。

 

進んでいくと、木々の密度が少しずつ薄くなり、そして高地の手前あたりで森林は途切れた。
高地とその周辺は草原になっており、飛び地のような林がちらほらある程度である。

 

「あの林を隠れみのにしていきたいところだけど……」
ネズミがアリスに話しかけた瞬間、一発の銃声が青空に響いたかと思うと、続けて破裂するような金属音がした。
「アリス、伏せて!」
ネズミがアリスの機体の頭をおさえる。
「狙撃だ!」
ネズミは声を潜めながら、周囲を警戒する。

 

すると、レース参加者名簿のカナリアの部分に、「リタイア」という表示が出た。
「今の狙撃だな……たぶんワシだと思う。
ふー、発見されたのがボクらでなくて幸いだね。」
「けっこう近くにいるのかしら」
「たぶんね。
やはりみんな考えることは同じなのさ。
で、アリス、ボクらもきっちり戦闘態勢を整えよう」
「うん。わたしはかなり近くに来た敵に向かって体当たりをすればいいのね」
「うん、敵が近くに来る前にボクの狙撃で倒せればいいんだけど、不意をつかれたり、撃ちもらしたときに、狙撃態勢に入っているボクでは対応しきれないから。
その体当たりを準備しつつ、アリスはボクが警戒する方向の反対側を警戒してね」
「わかったわ」

 

2人は森林が途切れるぎりぎりの場所に位置どり、周囲に敵がいないかを調べ始めた。
そうしてできる限り調べたのちに、近くにある飛び地となっている林へ移動した。
幸い、狙撃を受けることはなかった。

 

そして、今度はその林の中から、周囲に敵がいないか警戒する。
その警戒中、マップに突然敵の反応が現れた。

 

「何機か動いている! 近いよ、アリス!」
アリスがマップを見ると、3つの反応がアリスたちの前方へ向かって移動している。
参加者名は、カニ、ドードーカササギである。

 

直後、森林の中からその3機が現れた。
戦闘中である。

 

「む、どうやらドードーカササギはチームを組んでいるね」
「カニさんは不利ね。何かする?」
ドードーか……少し様子を見たほうがいいね。
たぶん、ボクら以外にもこの戦いを見てる者が必ずいるから……」

 

とネズミが言うか言わないかのうちに、ドードーの機体の上半身が爆炎とともに吹き飛んだ。

 

「ほら来た。
ワシはドードーのアンチ、つまりドードーのやり方が好きじゃないから、この隙を見逃すはずはないよね」
「これで一対一になったわ、あ、でもワシがカニの味方をするなら、形勢逆転かしら」
「いや、ドードーだけを刺せば満足だろうから、残りの2人には手を出さないんじゃないかな。
それに、ワシもボクがいることを知っているから、ドードーを撃った射撃位置で何回も狙撃はしないと思うよ」
「さっきのドードーへの狙撃で、ワシがどこにいるのかわかるの?」
「おおまかな方角だけ。アリスの言うとおり、カニの味方をしてカササギを狙撃してくれば、より正確な位置を割り出せたかもしれないけど、さすがにそんなに甘くはないか……」

 

ネズミはワシの射撃した方角から、ワシの次の射撃位置を探ろうと考えはじめ、アリスはカニとカササギの対決を見守った。
すると、モニターに『注意:目的地出現』という警報が流れた。

 

「来たよ、アリス! 赤いリングがどこかに出たはずだ! まずは、近くにないか探そう!」
「わかったわ!」

 

アリスが周りを見渡すと、とてもラッキーなことに、アリスたちの前方に赤いリングが見えた。
ちょうどカニとカササギが戦っている場所のすぐ横である。

 

「ネズミさん、あれ!!」
「なんてとこだ! 周りからはまる見えだけど、こりゃ行くしかないね!! アリス! 頭を低くしながら最大速度で行くよ!」
「うん!」

 

アリスとネズミが駆け出す。

 

かたや、カササギと戦っていたカニは、突然リングが自分たちの近くに出現したことに気づいた。
が、そのリングへ意識を向けたことが隙となり、カササギの射撃をもろに受け、リタイアとなった。
カササギはカニを倒したあとにリングに気づき、すぐさま飛びこんだ。
が、その体は強力な射撃を受け、リング外へと弾き飛ばされた。
ワシの狙撃である。

 

カササギがリング外へ弾き飛ばされるやいなや、ワシは近くの林から姿を現し、高速で進んで赤いリングへと入った。
レース1位はワシ。

 

ワシがゴールしたあと、ワシの狙撃で被弾したカササギがよろよろと立ち上がり、そのままリングへと倒れこんだ。
レース2位はカササギ

 

アリスとネズミはそのありさまを見つつ、リングへ近づいたが、突如攻撃を受けた。
カモとインコが攻撃をしかけてきたのである。
カモとインコは、アリスとネズミよりも赤いリングに近い場所にいたが、そこからアリスとネズミに向かって猛然と進んでくる。

 

「やれやれ、レースの目的よりボクへの攻撃が優先かい? モテるのも考えものだな!」
ネズミはビームライフルで応戦する。
アリスも機体の向きをかえ、カモとインコの迎撃にはいろうとした。

 

が、
「アリス! 彼らの狙いはボクだ! 君はリングへ行くんだ!」
「でも…」
「今なら3位に入れる! 4位とでは経験値の入り方が違う! 君が行け!」
「そんな、ネズミさんとはチー…」
「ええいアリス! 問答無用!」
ネズミは戦闘中にもかかわらず、ライフルを手から離して両手でアリスの機体をつかみ、勢いをつけてリングのほうへ放り投げた。

 

そのネズミの隙をついて、カモとインコは猛然と攻撃をしかけつつ接近してくる。
「あ痛たたた、調子に乗ってもらっては困るね!」
ネズミはライフルを拾うやいなや、近づいてきたカモを射抜いた。
リタイアするカモ。

 

アリスは、リングのすぐそばまで投げ飛ばされた。
「ネ、ネズミさん……」
やむをえず、リングへと滑り込む。
レース3位はアリス。

 

ネズミとインコの戦闘は続く。
「ふふ、あんな宝石の原石みたいなプレイヤー、世話を焼かずにはおれんなぁ」
ネズミはニヤリと笑いながら、戦う。

 

アリスはゴール後、ラウンジでネズミを待とうとしたが、アリスがシートから降りた瞬間、シートやモニターどころかラウンジさえも消えてなくなっていた。
「え? なんで? ネズミさん……」
アリスは急にさみしくなって泣いてしまった。
すると、ピチャピチャと足音がした。
アリスはネズミが来てくれたのでは、と思って顔を上げたが、そこにやって来ていたのはウサギだった。