戦い方の探索者

よりマシな「戦い方」を築く

不思議の[ゲームの]国のアリス その8 (完)

 

●ウミガメもどきに追われて


クロッケー場での戦いの直後、くしゃみクランの生き残りに対して追撃戦のミッションが行われた。
くしゃみクラン側のミッションの目的は、指定された場所まで生存してたどり着くことである。

 

アリスは、1人でミッションを行うことになった。
追撃者は、ハートクランのウミガメもどきとグリフォン
マップは森林地帯で、その面積の多くは森に覆われ、ちらほらと草地が点在している。

 

アリスはマップへ出現すると、地形を確認したのち、ゴールとなる区域へと移動を始めた。
「追手のグリフォンって、あの空を飛んでいた機体かしら……
地上を進むと木々が邪魔で速度を出せないので、あの機体には追いつかれそうね」
アリスは、できるだけ発見されることを防ぐため、木々の陰に沿って進んだ。

 

追撃者2人は、少し遅れてマップへ出現し、アリスを追い始める。
2人は、グリフォンが少しだけ先行して飛び、続いてウミガメもどきが地上を進んでいた。
グリフォンや」
とウミガメもどき。
「なんだい、ウミー」
「あのアリスとやら」
「うん」
「さきほどのチーム戦にあっても、戦いでの『正々堂々』を忘れなかった。
あれこそ、武人の姿勢だ。
武人には、こちらも武人としての心意気で応えさせてくれないか」
「やれやれ……
ウミーが戦いにロマンを持ち込むのは勝手だけど、そのアリスが本当に武人の思考をしていたかどうかはわからないんじゃない?」
「うむ、あるいはそうかもしれない。
しかし、彼女の剣筋と振る舞いは、武人のそれだったよ」
「……カーッ! しゃあないな~。
勝つために手段を選ばないぼくには、その勝ち方にこだわる気持ちは理解できないが、尊重するよ。
ただし、武人の心意気とはいえ、こちらが負ける確率をわざわざ高めるわけだから、負けたときの女王への言い訳は任せたよ」
「感謝する。
そして、任された!」
「まあ、ウミーの一騎打ちの観戦は、ぼくの楽しみの1つだから、いいよ」

 

グリフォンはそう言うと、高度を下げてウミガメもどきの機体の肩を腕でつかみ、持ち上げた。
「よし、じゃあ推進器の制限装置を外すよ。
衝撃に備えてくれ」
「よし! やってくれ!!」
グリフォンは、その背部と脚部の推進器の制限をとりはらった。
凄まじい加速がかかる。

 

ちなみにグリフォンは、普段は他の機体を持ち上げると、ほとんど速度を出すことができなくなる。
しかし、推進器の制限装置を外すと、他の機体を持ち上げても、かなりの速度で飛ぶことができるようになる。
その代わり、一定時間後に推進器が破壊されて、ほぼ移動不能になるのだった。

 

グリフォンは、高速でアリスのいる場所を飛びこえ、ゴール区域手前の草地へ到達した。
その草地の上空で、ウミガメもどきをつかんでいた腕をはなし、降下させる。
直後、グリフォンの推進器が爆発し、煙をひきながら近くの森の中へ墜落していった。

 

「じゃあ武人さん、健闘を祈ってるよ~」
墜落したグリフォンは、生存していたが、そのまま自らリタイアした。
「おうよ!
わが一閃を御覧じろ!」
ウミガメもどきは威勢よく答える。

 

アリスは、自分の上空をグリフォンたちが高速で飛びこえていったことを確認していた。
そして、ゴール区域手前の草地で、ウミガメもどきが仁王立ちしている姿を遠目で発見する。

 

「あの機体は、クロッケー場で初めに戦った人。
あんなバレバレの位置にいるなんて……
そう、再戦ということね」
アリスはウミガメもどきの意図を察した。
森の陰に隠れるのをやめ、草地へと進み出る。

 

「よくぞ!
やはりそなたは武人であった。
さあ、始めよう!」
ウミガメもどきは頭の上に剣をかかげ、上段に構えた。

 

アリスは、剣を体の左側に横向きに構えたまま、全速力で突っ込んだ。
アリスもウミガメもどきも、フェイントをかけて敵に隙をつくり、その隙に斬りかかろうとは考えず、ただ己の鍛え上げたその一太刀を最速で相手に見舞うことだけを考えた。

 

アリスとウミガメもどきの距離がぎりぎりまで縮まる。
ついに、ウミガメもどきは剣を上段から振り下ろし、アリスは左から右へと薙ぎ払った。

 

直後、アリスの機体の左腕が吹き飛び、ウミガメもどきの機体の上半身は下半身と別れた。

 

アリスは左腕を失っただけでなく、左脚にも激しい損傷を受け、機動力をおおいに削がれた。
しかし、左脚を引きずりつつも、なんとか戦場から離脱しようとする。

 

ウミガメもどきの上半身は地面に転がったが、まだウミガメもどきによって制御されていた。
ウミガメもどきがその気になれば、よろよろと戦場を後にするアリスに向かって剣を投げ、撃破を狙うことも不可能ではない。
だが、ウミガメもどきは決闘の興奮と歓喜に満たされ、コクピットの中で高笑いをするのみだった。

 

アリスは戦場を離脱した。
ミッションの目的達成となる。

 

 

●法廷闘争


追撃戦のミッションのあと、ふたたびハートクランとくしゃみクランの戦いがセッティングされた。
くしゃみクランは雪辱を期する。

 

戦いは、今度は11人対11人で行われることになった。
勝利条件は、前の戦いと変わらず、敵のリーダーの撃破である。
ハートクランのリーダーは女王、くしゃみクランのリーダーは公爵夫人で、これも前の戦いと変わらない。

 

戦闘のおこなわれる場所は、法廷と決まった。
法廷ステージは、その名の通り、裁判を行う部屋の中で戦うことになる。
部屋の奥側には、裁判官の座る高い机(法壇)があり、その法壇の両端から部屋の中央側へ伸びるように、検察官の机と弁護人の机がそれぞれ置かれている。
検察官の机と弁護人の机の間には、法壇のすぐ下に書記官の机が置かれ、その書記官の机と向かい合う形で証人が証言をする机が置かれている。


部屋の手前側には、傍聴席としてたくさんのイスが置かれ、その傍聴席と検察官および弁護人の机の間には、柵がしかれている。
(この柵は、通常ならばそれぞれの"くい"の間に隙間があるのだが、この法廷の柵は低い壁のようになっており、隙間はない)
これらの机やイスや柵は、破壊不可能で地面に固定されており、狭い部屋の中でそれらを上手く利用することが求められるステージである。

 

また、各プレイヤーの法廷内での出現位置は、ランダムと決まった。
これは『ランダム』の名の通り、法廷内のどこに誰が出現するかはわからない。
場合によっては大混戦のまま、組織だった活動ができずに戦闘が終わることもある、不安定な配置方法である。
さらに、法廷ではモーショントラッカーが使えないようになっており、またリタイア者の確認もできないルールになっていることが、その混戦に拍車をかけることとなる。

 

くしゃみクランは戦闘準備に取りかかった。
公爵夫人は、先のハートクランとの戦いで女王に一太刀入れてなお生存したアリスを称賛し、アリスを女王撃破のかなめとして強化することにした。
アリスの剣『フラミンゴ』の先端に推進器をつけ、断ち切る力を強めるとともに、アリスの体を地面に固定するための、地面に杭を打ち込む装置を脚部につけた。

 

チェシャー猫は、その武器である爆弾が女王には効果が薄いことがわかったので、アリスの女王への『斬りつけ』を直接支援する役割となった。
他のメンバーは、この2人が女王に接近するための射撃支援や、公爵夫人の護衛などを行う。

 

この『他のメンバー』の中には、今回から戦いに参加することになった、ネズミと青虫が含まれる。
アリスはネズミとふたたび戦えることについて、感激もひとしおだった。

 

「ネズミさん!!」
「おひさしぶり! アリス!」
「レースでゴールしたあと、そのまま会えなかったのでさみしかったわ」
「ボクもだよ。しかし、見違えるほど強くなったようだね」
「ネズミさんの教えがあってこそだわ。あと、クリスタルのドアを通るための推薦状、感謝してます」
「なぁに、推薦状はほんのちょっとのプラスにしかならないよ。通れたのは君の力だ。
その力、この戦いでも発揮されることを期待してるよ!」
「ええ、必ずや、女王撃破の務めを果たしてみせるわ」
「頼もしいね! アリスに戦神のご加護がありますように!」

 

2人は戦いの準備に戻り、そしていよいよ、戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

アリスは、検察官の机のすぐ前に出現した。
ほぼ同じ位置に、ハートクランの延臣2号も出現した。

 

延臣2号はハートクランに所属するプレイヤーで、延臣1号とともに今回の戦いに参加している。
延臣はそのどちらも、巨大な盾を装備し、重装甲をまとっている。
剣や銃は持たず、攻撃は巨大な盾による打撃で行う。

 

アリスは、敵であることを認識するや斬ったが、延臣2号は盾で防いだ。
延臣2号はそのまま後退し、傍聴席のほうへと去った。

 

「ハートクランも、まずはリーダーのもとへ集結するのね」
アリスはそう言うと、検察官の机に背をよせて張りつき、その裏側の様子をうかがった。

 

するとそこには、ハートのジャックがおり、そしてその槍によって串刺しにされたチェシャー猫がいた。
それを見るや、アリスはハートのジャックに斬りかかる。
ジャックは、その槍が完全にチェシャー猫を貫通しているので、とっさの回避が遅れ、右腕が吹き飛んだ。
アリスは続けて斬りかかろうとするが、ジャックは槍を捨て置いて、傍聴席の柵の向こう側へと一気に大きくジャンプして逃げた。

 

ジャックの逃走を見届けたあと、アリスはチェシャー猫に駆け寄った。
「チェシャー猫さん!」
「アリス、済まない……よりによって近接格闘の手練れと向かい合って出現するとは……にゃあ……
だが、やつはもう槍を使えない。
アリス、女王の首をとってくれ……にゃあ」
チェシャー猫はそう言い残してリタイアとなり、光となって消えた。

 

アリスは、検察官の机の裏から、周囲の状況を確認した。
すると、法壇からときおり幾筋かの細いビームが、傍聴席へ向かって伸びている。

 

「狙撃組は、まず法壇を確保しに行くって言ってたけど、うまくいったようね」
アリスは、くしゃみクランとの合流を果たすため、法壇へ向かって進んだ。

 

アリスが法壇につくと、そこではネズミ、ヤマネ、子ブタの3人が、それぞれのタイミングでハートクランを狙撃していた。
「おお、アリス、合流できてよかった。」
ネズミが声をかける。
「狙撃組も、みんな無事のようね」
「ぶー。でも、残念ながらヤマネさんは斬られたみたいで、もうこの場から動けないんだ」
と子ブタ。
「ふぁ……まだ射撃できるだけ……もうけものさ」
ヤマネは若干ウトウトしながら、一発撃った。
「チェシャー猫さんは、出現した瞬間に敵に突かれてリタイアしたわ」
とアリス。
「ぶー。不運すぎる……」
子ブタが鼻をならす。
するとネズミが、
「アリス、とりあえず、弁護人の机の裏に向かってくれ。
そこに、狙撃組以外が集結しつつある」
と弁護人の机のほうを指さして言った。
「わかったわ」
アリスは答え、狙撃組の背後を通って、弁護人の机へと進んだ。

 

弁護人の机の裏には、公爵夫人、料理人、帽子屋、三月ウサギ、青虫がいた。
公爵夫人の話によると、弁護人の机の裏に、たまたま公爵夫人、料理人、帽子屋の3人が集まって出現したらしい。
そこですぐに法壇へと向かったところ、ヤマネとハートクランの処刑人が戦闘を開始したばかりだった。

 

ヤマネはその戦闘で脚にひどい損傷を負ったが、公爵夫人たちの背後からの奇襲によって、処刑人は撃破されてリタイアとなった。
その後、ネズミ、三月ウサギ、青虫、子ブタの順で合流し、今、アリスにいたるという。

 

アリスは、公爵夫人にチェシャー猫が撃破されたことを告げた。
「そうかい、チェシャー猫がねぇ。運がないことだよ。
ともあれ、アリスは合流できた。これで女王撃破のために動き出せる」
「カエルさんは、まだ来ていないようだけど、どうするの?」
「待つのはここまでだ。
なあに、これから動き出して、うまくいけばその途上で合流できるさ。
カエルが生きていれば、ね」

 

アリスや公爵夫人は知るよしもないが、実はこの時すでにカエルはリタイアしていた。
カエルの出現位置は傍聴席のど真ん中で、その周囲にはハートクランの女王、ウミガメもどき、サカナが出現しており、奮戦するも敵中にて壮絶に果てたのである。

 

公爵夫人は、続けて言った。
「まとめると、現在、くしゃみクランはチェシャー猫がリタイア、カエルが不明。
ハートクランは処刑人とグリフォンがリタイア。
序盤でそんなに差はついていないね」
グリフォンもリタイアしたんだ」
とアリス。
「ああ、狙撃組が、飛行をはじめたグリフォンを落としたんだ。
グリフォンもまあ、この室内という環境との相性が最悪だから、運がないね。」
アリスは、以前の追撃戦でのグリフォンの活躍を思うと、少し気の毒に思った。
公爵夫人は自分の武器をさすりながら、
「とはいえ、女王のビーム砲撃の観測兵をすばやく撃破できたのは、いい感じではある」
と言った。
アリスはうなずく。

 

「さて、ではアリス、行こうか」
公爵夫人は、アリスの肩をぽんとたたいた。
「ええ」
アリスの顔が引き締まる。


一方、ハートクランは、リーダーの女王が傍聴席の真ん中に出現した。
実は、女王に機動力はない。
ジェネレーターから生み出されるエネルギーを、その重装甲と強力なビーム砲の維持に使うため、機動力を捨てたのである。
そしてまた、装甲の継ぎ目をなくすため、首や腰も装甲で覆い、回転させることもできなくなっている。

 

そんな女王の移動や体の回転(ビーム砲の照準)は、護衛がワイヤーで引っ張ったり、押したりすることで行う。
(女王が唯一動かせるのは、ビーム砲を撃つさい、体を固定させるために地面に打ち込む杭だけである)

 

つまり、女王は護衛がいないと何もできないため、戦いが始まるやいなや、護衛をはじめハートクランのメンバーは女王を探してそのもとへと集結した。
だが、集結したものの、法壇をくしゃみクランの狙撃組に取られたため、高所から一方的に撃ちまくられることになった。

 

女王、そしてその護衛である王、延臣1号、延臣2号は、強力な装甲や盾を持っているので、狙撃を恐れることなく傍聴席の上に陣取っている。
(女王の体が大きすぎて、傍聴席の席と席の間には入れないのだ)
その他のメンバーは、狙撃を受けると当たりどころ次第では一撃でリタイアとなるので、傍聴席の前に設けられている柵の陰に隠れていた。

 

柵の陰に隠れているメンバーは、頭や体を少しでも柵の外に出すと撃たれるので、身動きがとれない。
このままでは柵に隠れている5人(ハートのジャック、ウサギ、サカナ、ウミガメもどき、兵士4号)が戦力にならないので、狙撃組を排除するべく、女王は護衛とともに部屋の壁沿いを移動し、法壇を脅かすことにした。

 

王が先頭に立ち、延臣1号と延臣2号がワイヤーで女王を引っ張って壁に寄り、そして壁沿いに移動を開始する。
その壁沿いの移動を開始した矢先、傍聴席に煙幕弾が投げ込まれ、煙幕が傍聴席一帯に立ち込めた。

 

女王たち4人は、煙幕でその姿が隠れる。
柵の陰に隠れているハートクランの5人は、すわ襲撃か、と思い身構えた。

 

すると、まずは煙幕の中の女王がいるであろう付近に狙撃がなされた。
直後、女王のビーム砲が、ちょうど法壇のほうへと放たれた。

 

ビームは法壇にさえぎられて消え失せたが、煙幕を少しだけ傍聴席から取り払った。
すかさず、次の煙幕弾が傍聴席へと投げ込まれる。

 

その2回目の煙幕弾が投げ込まれて煙幕が広がるのに合わせて、なんと狙撃組のネズミと子ブタが法壇の上に立った。
そして、ネズミが法壇から見て柵の左端側、子ブタが柵の右端側へ向かって大きくジャンプする。

 

柵の陰で、女王の動向に気をとられていたハートクランの5人は、不意を突かれた。
柵の左端にいたサカナは、ジャンプしたネズミにジェネレーターを撃ち抜かれ、リタイア。
柵の右端にいたウミガメもどきは、同じくジャンプした子ブタに頭部を吹き飛ばされ、リタイア。

 

隣にいたウミガメもどきの頭が突然吹き飛ばされたのを見た兵士4号は、慌てて立ち、つい柵の上に頭を出した。
法壇に残っていたヤマネはそこを見逃さず、狙撃で兵士4号の頭部を撃ち抜いた。
兵士4号はリタイア。

 

柵の陰に残っているのは、ウサギとハートのジャックだけとなった。
ウサギは、恐れをなして傍聴席の煙幕の中へとジャンプして消えた。
ハートのジャックは、柵の陰をかがみながら素早く移動し、ジャンプ中の射撃を終えて着地しつつある子ブタに飛びかかった。

 

ジャックは持っている剣で子ブタを突く。
ジェネレーターを貫かれた子ブタは、リタイア。
ヤマネがジャックを狙撃するが、ジャックは光となって消える前の子ブタの機体を盾にして、狙撃をさえぎった。

 

だが、ヤマネの狙撃とほぼ同時にネズミにも狙撃され、そちらをかわすことはできなかった。
ジャックの胸部をビームが貫通し、ジャックはリタイア。

 

ジャックの機体が光って消えるか消えないのうちに、公爵夫人、料理人、アリス、帽子屋、三月ウサギ、青虫の5人が煙幕の中へと突入する。
突入は、料理人、帽子屋、三月ウサギ、青虫が横一列になって突っ込み(青虫が壁沿いの位置)、三月ウサギのうしろに公爵夫人、青虫のうしろにアリスが続いた。

 

煙幕の中、壁沿いに進んだ青虫が、まず延臣2号と接触した。
青虫は、雄たけびをあげるとともに、剣で思いきり延臣2号の盾をたたく。

 

その雄たけびと盾をたたいた音をたよりに、料理人、帽子屋、三月ウサギも目近に迫っている女王の護衛を探す。
直後、帽子屋と三月ウサギが王と、料理人が延臣1号と接触した。
3人は、青虫と同じく雄たけびをあげ、剣で思いきり目の前の相手の盾をたたいた。

 

その合図を機に、青虫が剣を捨てた。
青虫の機体には、隠し腕が備わっている。
ふだんは腰の部分に隠れているその腕を、青虫は展開させた。

 

そして、延臣2号の盾をもともとの腕で押しのけ、隠し腕で延臣2号の胴体に組みついた。
組みついたまま、延臣2号を持ち上げにかかる。
延臣2号は重装甲なうえに重い盾を持つので、重量級の機体である青虫でもさすがによろめいたが、なんとか持ち上げた。

 

青虫は、そのまま最後の力を振り絞って、後ろに倒れこむようにジャンプした。
そのジャンプとほぼ時を同じくして、これまで青虫と延臣2号がいた場所に、すさまじい速度でアリスが進入する。

 

アリスは前に進んで女王を確認するやいなや、地面に杭を打ち、下半身を固定させた。
そのまま、全身の力を使って左から右へと剣を振る。

 

その速度とパワー、正確さを極限までに高めた一振りが、女王の腹部に直撃する。
並みの機体であれば一瞬で両断される『斬り』ではあるが、これまた極限まで装甲を強化した女王の機体は、斬られながらもアリスの剣に押されることで、その剣の威力を逃がしつつあった。

 

女王は、これならリタイアはないな、と思ったが、アリスたちはすでにこの点についての対処は済ませていた。
女王は、壁に押しつけられた。

 

引き続き、アリスの剣が腹部を断ち切る。
「こやつぅぅぅぅぅううううううう!!!!!!!!!!!!!」
女王が叫ぶ。
が、極限まで集中しているアリスには、聞こえない。

 

もはや断ち切る機械と化したアリスが、その作業を終えたとき、女王の巨体は光と化して消えた。

 

(務めを果たしたわ!)
とアリスが思う間もなく、さらに強い光がアリスを包み、アリスも消えた。

 

 

 

 

ふと気がついてみると、アリスは公園のベンチに座っていた。
「寝てしまったのね」
目の前では、アリスより小さな子供たちが遊びまわっている。
「ずいぶん、へんてこりんな夢を見たわ……」
アリスは、夢の内容を思い出し、しばし味わった。

 

「ゲーム、か」
ふと視線を上げると、公園のとなりにゲームセンターがある。
アリスは立ち上がり、ゲームセンターへ入ってみた。

 

入ってすぐのところに、タイヤの無いバイクのようなシートがある。
そのバイクの横には、遊ぶためのカードを差し込む、差込口があった。

 

なんとはなくアリスが自分の服のポケットに手を入れると、そこには一枚のカードがあった。
そのカードを差込口に入れ、そしてお金を投入口に入れる。
モニターに、シートに座るように指示が出たので、アリスはシートにまたがる。

 

アリスは顔を上げ、モニターを見る。

 

そして、ゲームが始まるのだった。