サブスクリプション(一度の支払いで、一定期間サービスを利用するモデルのこと)を、デジタル化したシステムで提供するモデル。
・このモデルは、とある流れに乗っている。
それは、顧客の関心が、「製品の所有」から「製品を使って実現できる結果を得ること」へと変化している流れ。
なので、その流れに応じてビジネスモデルを「製品の販売モデル(顧客は製品を所有)」から、「サービスの利用モデル(顧客は製品によって得られる結果だけ得る)」へと変化させる必要がある。(このことを「アズ・ア・サービス」と呼ぶ)
この変化を実現させるビジネスモデルの一つが、「デジタル化されたサブスクリプション」というモデル、ということ。
・サービスをデジタル化して提供することで、顧客には、デジタル化された顧客IDが割り振られる。
そして、顧客が自分のページを持ち、自分の購買や閲覧などの履歴を知ることができるようにする。
このようにして、企業が個々の顧客と(サービスの利用状況や利用行動の)データを共有し、かつ、企業が提供するサービスの内容も知らせる。
そして、それらのデータから、顧客のウォンツ(欲求)、ニーズ(必要)、サービスの望ましい提供方法、あるいは欲求として現れていない心理(インサイト)、を発見する。
こうしたデータからの発見を元に、サービスを進化させ、顧客が本当に望むサービスをつくる。
※製品の単なる販売をするビジネスモデルだと、企業は顧客(最終消費者)の名前すら知らず、ましてや、どのように利用されているかや、ウォンツ(欲求)やニーズ(必要)なども知らない。
・このデジタル・サブスクリプションモデルの中心になるのは、データ生成の元となる「顧客との密接な関係」である。
個々の顧客との関係に重点を置き、個々の顧客にとって好ましい体験を提供することで、サービスに対する愛着や思い入れの強化を実現する。
好ましい体験の例
サービスのカスタマイズ化
不快な体験の除去
楽しさやカッコよさなどの心理的価値
など
つまり、顧客ロイヤリティを高める。
(※ロイヤリティ=信頼や愛着といった感じの気持ち)
・「顧客との密接な関係」が中心となるが、顧客との関係を無視するサブスクリプション・サービスの企業もいる。
そういった、デジタル・サブスクリプションの本質に反する、自称サブスクリプション・サービスの特徴。
「見つけにくく、複雑な解約手続き」
「不透明な請求」
「顧客に対するお粗末なコミュニケーション」
「ただ商品を送りつけ、代金を支払わせるだけのモデル」
【顧客に提供される価値】
以下の「魅力的な体験」を顧客に提供する。
・顧客は、継続的に必要とするものを買うたびに何度も支払いをする必要がなく、手間と時間の節約になる。
・モノ(製品)を所有することなく、望んだ結果や効果を得られる。
・標準化されたものではなく、自分用にカスタマイズされたものを得られる。
・顧客は、企業の都合で行われる計画的陳腐化(製品のモデルチェンジを繰り返して買い替えを促進する)につきあわされることない。そして、常にサービスの改善を受けられる。
・企業が、顧客との密接な関係を中心においてサービスを提供するので、利用にあたって不快な体験が抑えられる。
・楽しさやカッコよさなどの心理的価値
【企業がお金を得る手段】
一括前払い
一定期間ごとの支払い(月や年ごと)
サービスの売り方は、デジタル化(数値化)により、利用状況に応じたもの(使った分だけ払う=従量課金)にすることが可能。
あるいは、定額使い放題(=フラットレート)にすることもできる。
※ちなみに、従量課金かフラットレートかは、デジタル・サブスクリプションの本質ではない。
本質は、「個々の顧客との密接な関係」と、その関係から得られる「データの獲得」、そして、「データの活用」によって個々の顧客のニーズやウォンツに応えられるサービスをつくることができること。
サービスの売り方も、顧客のニーズやウォンツに応えるやり方が望ましい。
【企業にもたらされる効果】
・(支払いを定額にすれば、)定期的かつ継続的な売り上げによる、収益の安定化。
・個々の顧客との密接な関係による、高い顧客ロイヤリティ。
この高いロイヤリティにより、コモディティ化した市場でも他社と差別化できる。
(※コモディティ=自社の商品が他社の商品と同じような機能を持ち、差別化できる点は価格だけ、という状態。
顧客にアピールするためには価格で差をつけるしかないので、安売り競争になって利益が削られる)
・(顧客ロイヤリティの高い)顧客同士のコミュニティも、構築して維持できれば、他社にはマネされにくい差別化要因となる。
くわしくは……
【事例】ネットフリックス
p106(アズ・ア・サービス)
【事例】トヨタ、ダイキン工業